大きな戦いを終え世界に平和が戻ってきた。
本日は守護五家のメンバーとの親睦会という名目の、祝杯をやろうという計画の下全員が卓の家に集まっていた。
だが卓は突如どうしても外せない用事ができたということで、先に始めてるようにと言われてしまった。
そして卓を除く5人だけが居間に残り、いまだ覚めやらぬ興奮と共にはしゃぎ合う。
そのはずだったのだが…。
「あっはっはっは、たくまぁーこっちこっちー!」
玉依姫こと、は赤い顔のまま同級生を引っ張っていた。
君とお酒と大騒動
大人たちのいない親睦会。
口うるさい卓もいないということで、真弘は台所から拝借してきた酒を手にしていた。
と慎司も初めのうちは咎めていたものの、やはり気持ちが緩んでいるのもあり、結局はその酒を口にしてしまう。
とまぁそこまではよかったが、一口酒を口にした途端、の様子が変貌したのだ。
「まぁ飲酒なんて大したことねぇよな!この俺様にかかれば酒なんて敵じゃないぜ!」
「先輩、それはちょっと間違ってるような・・・」
酒を口にしたこともあって普段の俺様に拍手がかかった真弘に、拓磨が溜息をつく。
そして拓磨が隣にいたに目をやったとき、彼女は赤い顔でどこかをぼーっと見つめている。
可笑しいな、と思って声を掛けたときだ。
「あっはっはっは、たくまぁーこっちこっちー!」
「は?」
言うや否や赤い顔のが拓磨を引っ張り、思わずバランスを崩した体に躊躇なく抱きついてきた。
この行動に驚いたのは拓磨本人もだが、周りにいた者全員も思わず呆気に取られる。
そしてだけがへらりと破顔したまま擦り寄る。
「たくまぁーお酒ー。お酌してぇ?」
「バッ、お、お前酔ってるな!?」
拓磨の胸に猫のように甘えてくるに、焦ってその体を引き剥がそうとするがは一向に離れようとしない。
勢いよく周りのメンバーを見れば目を丸くしてその様子を凝視していた。
「ちょっ真弘先輩、見てないで助けてくださいよ!」
「・・・・ほー、は酔うとくっつきたがるのかー。よかったじゃねーか拓磨!役得だ!!」
「そんなわけないでしょうが!」
笑い飛ばす真弘に思わず突っ込みを入れていると、冷静な祐一の声が聞こえた。
「だが、そのままというわけにもいきまい。そろそろ大蛇さんも帰ってくる頃合だ。
もしこんな場面を見られたりでもしてみろ。拓磨、わかっているのか?」
その言葉に、一瞬頭の中に浮かんできた言葉は「まずい」だった。
もしこんな所を大蛇さんに見られたりでもしたら…?答えは既にわかりきっている。
「ま、まずいでしょそれは!あーもう離れろお前!俺はあの人に怒られるのだけはごめんなんだよ!!」
焦って引き剥がすと今度は大人しく離れてくれ、唇を尖らせて文句を言っている。
その様子が少し可愛く思えてしまったのはきっと錯覚だ。酒のせいだ。
拓磨に引き剥がされたは、今度は矛先を慎司へと向ける。
「んー、じゃあ慎司君っ。お酌してぇ?あ、それともお姉さんがしてあげよっか」
「え?あ、うわぁ先輩!だ、抱きつかないで下さいよ!ほら、水持って来ましたから大人しく飲んで酔いを醒まして下さい」
「むー・・・・やだぁ」
「お願いしますよ!このままじゃあ僕ら全員、大蛇さんに怒られちゃいます!」
普段は優しい卓が一度怒ればどれほどのものかよく知っている全員は、何とかしての酔いを醒まそうと必死になる。
そうこうしているうちに、すっと隣に祐一が現れの肩を抱く。
「、ほら水だ。あまり酒を飲むと明日が辛くなるぞ」
ナイス祐一先輩!と拓磨がガッツボーズをするも、いつもは大人しくなるはこれでも聞き入れない。
「い・や!私、酔ってなんかいませんー」
「酔ってる奴ほどそう言うんだ」
ほらと水を差し出すもは嫌がり、今度は真弘へと次々に標的を変えていく。
同じほどの背しかない真弘は思わずその勢いのまま押し倒される格好になり、慌てて傍にいる拓磨に叫ぶ。
「たたたたくまぁぁぁ!!早く引き剥がせ!この体制はやべぇって!!」
「わかってます・・・よっ!」
拓磨がの体を押さえつけるように後ろから抱きしめ、その隙に下から真弘が出てくる。
そして2人は最終手段だ、とを畳に押さえつけた。
傍から見れば拓磨と真弘2人がを無理やり押し倒している形になってしまったが、もうなりふりを構っていられない。
大蛇さんが帰ってくる前にこの状況をどうにかしなくてはいけないのだ。
「祐一先輩、今のうちにこいつを部屋に運んじゃいましょうよ!これ以上ここに置いといたら何しでかすかわかったもんじゃありませんて!」
「そうだな・・・」
「お、おい大人しくしろって・・・!」
「やーぁぁぁ!はーなーしーてぇぇぇ」
両手両足押さえられたままいやいやと頭を振るに多少の罪悪感が襲ってくるものの、このいつ大蛇さんが帰ってくるかわからない状況では仕方ない。
どうしてもには酔いを醒ましてもらうしかない。
それが出来ないのなら大人しく眠ってもらうにこしたことはないのだ。
「やだぁぁ、すぐるさーんっ!」
「ば、馬鹿お前!そんな誤解されるようなこと言うんじゃ・・・」
涙目になったが叫んだその瞬間だった。
「・・・・・・何を、やっているんですか?あなた達は」
「お、大蛇さん・・・」
居間の入り口。
そこに、にっこりと普段どおりの笑みを浮かべる大蛇卓、その人が立っていた。
いや・・・・明らかに怒りを携えて、だ。
「すぐるさんっ!」
突然の登場に思わず力が緩んでしまった2人の手からすり抜け、赤い顔のままどこか千鳥足の状態で、笑顔でその人物に抱きつく。
その突撃に倒れることもなく、優しい笑みを浮かべたまま卓は抱きとめる。
冷や汗がだらだらと流れる他のメンバーはその様子を祈るように見つめた。
「すぐるさーん、えへへへー」
先程より格段に甘えた度合いが上がっている。
だがそんなを抱きとめたまま、状況を確認するように卓はじっと部屋の中を見渡す。
転がった空の酒。そして赤い顔の。結論は簡単に出た。
「勝手にお酒をさんに飲ませましたね?確かに彼女がこんな風になるとは思いもよりませんでしたが・・・。
それでも、この場の責任はきちんととってもらいましょうか」
反論できようはずもなく、口を噤んだまま全員は卓を直視する。
目が、全く笑っていない。
「すぐるさーん、あのねぇ」
1人呑気なはいつもの様子で話しかける。
卓はそんなに微笑し、「仕様のない人だ」と言うと軽々とその体を抱き上げる。
その行動に一番驚いたのは周りの方だ。
「全く、確かに私が遅れてきたのにも問題はありますね。今のところは保留にしといてあげます」
「大蛇さん・・・!」
「先に彼女を部屋に連れて行きます。戻ってきたときには・・・・わかっていますね?」
その場に笑顔だけ残し、卓は居間から去った。腕には半ば眠りかけのを抱いて。
戻ってきた卓のことを思うともう何も口にできず、固まる4人だった。
翌日、酷い二日酔いで目覚めたがどうなったかは、誰も知らない。
あとがき:
初めての緋色なのにいきなりこんな馬鹿な話でスミマセ・・・!
でもこういうお話大好きなので、書いてて凄く楽しかったです。
キャラがいまいち掴めていないので、偽者入ってて申し訳ないです。もっと精進いたします・・・!