かけてくれた言葉の優しさとか、繋いだ手の温かさとか、見つめてくれる眼差しの柔らかさとか。

そういうのが凄く嬉しいなって・・・・・・今は思うよ。









 ぬくもり










夕刻の教室の中、私はすることもなくボーっと空を眺めていた。

教室の中にはもう私以外の生徒は残ってなく、グラウンドから微かな声が耳に心地よい。

何をしているのかと言われると困るのだけれど、私はこういう風にただ空を眺めるのが好きだったりする。

だけどあんまり帰るのが遅くなると心配をかけてしまうし、ようやく私は重い腰を上げて帰る仕度をしだす。

拓磨はもう帰ってしまっただろうか。ふとそんなことを気にかけたときだ。





「あっれー、こんな時間までどうしたの?何か忘れ物かな」

「清乃ちゃん・・・?」





教室の入り口、そこに制服姿の清乃ちゃんがいた。部屋には鞄がなかったからもう既に帰ったものだと思っていたのに。

驚いて声を掛けたになにやら含み笑いで近づき、清乃は口を開く。

「鬼崎君が校門で立ってたよー?あれは誰かを待っていた感じだなぁ。ほら、早く行ってあげなよハニー!」





バンッと手のひらで意外と力強く叩かれ、思わずはバランスを崩して前に数歩よろめく。

恨めしげに後ろの清乃を見れば楽しそうに笑っていた。

だがそんな彼女とは裏腹に、どこか浮かない顔つきでいると清乃がそばに近寄ってくる。





「・・・どーしちゃったのさ、ちゃん。そんな顔しちゃってー。折角の可愛い顔が台無しだぞ?」

「清乃ちゃん、あのね…拓磨は」

「うん。だから校門で立ってるってば。それがどうかした?」





えっとと口ごもるに何かを感じ、ひょいと清乃は近くの机の上に座った。

こんな所を見られれば恐らく叱責を食らうだろう。

を見上げにこっと清乃はいつもの笑みを浮かべる。





「なんだい心の友、何か悩み事かな?それならこの清乃様に相談してごらん!」





どんっと胸を叩く清乃に苦笑いを浮かべつつ、すぐにその表情を曇らせてはぽつりぽつりと呟いた。





「あのね、こんなこと言うとその・・・可笑しいかもしれないんだけど・・・。最近、拓磨といると駄目なの」

「駄目?」





予想外の言葉に目を丸くする。





「拓磨の顔を見たり・・・・て、手を繋いだりしたりね?そういう時に私、すっごく緊張しちゃって。その」





かぁぁっと顔を紅く染めるに呆然としつつ、その相談に清乃は声をあげて笑った。

思わず反論しようとするの前に、口を開く。





「い、いや・・・あはは!ごめんごめん、笑っちゃって。・・でもまさか、君がそんなこと言い出すとは思わなくて」

「・・・こっちは真剣なのに」

「うんうんん、わかったわかった。それじゃあお姉さんがアドバイスをして進ぜよう」




その言葉に食いつく様子を満足げに見ると、清乃は自信ありげに言い放つ。





「それはまさしく恋だね!」

「・・・え?」

「まぁ確かに鬼崎君と付き合ってるって言っても、まだまだ純情だね!うーんそれは見てて初々しいよ」





どこか楽しげな清乃とは正反対にぽかんと口を開けたまま突っ立っている

そして間髪あけず、間抜けな一言を放った。





「は!?」

「とにかくあれだね。今まで平気だったのに、突然意識しだしたから緊張しちゃってるんだよ。もうちょっとしたら直るんじゃないかな?」

「き、清乃ちゃん!それは違うよ」

「どうかねー。君は、意外とそういうことに疎そうだし」





にやにやと笑う清乃を前にが頭が沸騰するかもしれないとさえ思った。

確かに拓磨と付き合って間もない頃はそんなことなかった。今までだってなかったし、これからもないと思っていた。

なのに突然、拓磨の笑顔が恥ずかしくなってしまったのだ。

思わず浮かんだ顔に更に紅くなっていく。




「・・・・まぁ、とにかく行ってあげなよ。もうずっとあそこで待ってるよ、彼」





優しい声が胸にしみこんでくる。

まだ高鳴る胸を必死に押さえつけ、は鞄を手にする。





「うん。・・・・ありがとう、清乃ちゃん」

「いいってことよ!」




出口に駆け出すに手を振り送り出す。

窓から校門をしばらく眺めていると、待ちくたびれた拓磨がに文句を言っているであろう様子が見て取れる。

先ほど言われた通りどこかよそよそしい態度のの手をとり、2人は帰宅した。

その様子を見届けると清乃も教室を後にする。


















「でもね、なんか清乃ちゃんてたまに凄く大人に見えるときがあるんだ。どうしてだろ?」





手を繋ぎながら帰り道話をしていたが、ふと思い出したように言う。

流石に清乃に相談したことは内緒だが。

拓磨はどうでもよさげに相槌を打つ。




「さあな。もしかして、あいつ本当は歳ごまかしてるんじゃねぇのか?」

「まさか!拓磨ってば、変なこと言うんだから」

「そうか?」




ありえない、と笑いつつも、どこか妙に納得してしまうであった。





あとがき:

何だか色々無理やりな話。
拓磨エンドでは清乃ちゃんの正体が(確か)バレていなかったので、こういうのもありかなぁ?と。
というか、この場合清乃ちゃんは学校にいるのだろうか・・・。
清乃ちゃんの「心の友」って言い方が凄く好きです。
ともかく無理やりな話でした!

拓磨が全然出てない…(汗